幽霊の思い出話

「近藤さんきついだろうな」

「仕方ない。これがあの人の仕事なんだから」

 山南さんは自分に言い聞かせるかのように呟いていた。

 計算の苦手なあの人が、任された先番役割を必死に頑張っていたのを俺たちは知っている。

 その努力を、大衆の前で罵り蔑んだ。俺たちはこの人とは合わない。ついていけないし、ついていきたくもない。そう思った。

「皆悪かったな。巻き込んでしまった」

 そんな申し訳なさそうに笑うなよ。

「近藤さん、俺たちは仲間です。気にしないでください」

 そう言うと、目頭を抑えながら「ありがとう」と近藤さんは言った。

 頑張ろう、近藤さん。
< 121 / 279 >

この作品をシェア

pagetop