幽霊の思い出話

 その日の晩、俺たちが部屋に居ると慌てた様子の平助がやってきた。

「あのさ、新徳寺の本堂に来いって」

 こんな夜更けに何の用事だ?不信感から眉間にシワが寄る。

「どうした?誰が呼んでるんだ?」

「近藤さんが皆を呼ぶように通達してる。呼び出してるのは清河八郎(キヨカワハチロウ)だと思う」

「なんだっていうんだ」

「わからない。俺まだ他の人たちに通達に行かなくちゃいけないから、早く新徳寺に行って」

「あぁ」

 清河さんは、この浪士組を結成することを幕府に提案したって聞いている。

「何かめんどくさそうだな」

 重たい腰をあげ、平助に言われたとおり、試衛館の面々と寒い中、新徳寺に向かった。
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