幽霊の思い出話

「へぇ、芹沢さん、まともなこと言うんだな」

「おい、新八」

 新八の頭を小突きながらも、同じこと思っていた。芹沢さんがそんな風に言うなんて想像もしていなかった。

「芹沢さんの言うとおりですな」

 それまで黙っていた近藤さんが立ち上がった。

「いやぁ、言おうと思っていたこと言われてしまいましたな、はははっ」

 近藤さんは頭を掻きながら笑ってみせた。俺たちの不安をかき消すように。

「清河さん、俺たちは将軍様の警護のため上洛したんです。決して清河さんに従うために、はるばる上洛して来たわけではない。将軍様が上洛するまで私たちはこちらに残る。だが幕府の命で江戸に帰れというなら、喜んで帰ろう」

 芹沢さんに負けない大きな声で、ハキハキと近藤さんは話した。
< 127 / 279 >

この作品をシェア

pagetop