幽霊の思い出話

 京に着いた途端、こんなことになるなんて・・・。考えても仕方ないのはわかってる。でも、考えずにはいられなかった。

 このままここで篭城するわけにもいかないだろう。どうにかしてここに居れるようにしないと、江戸に戻されることになる。それじゃ、何のために来たか分からない。

 この事があったあと翌日、清河さんは集まった建白書を提出しに向かわせたと聞いた。建白書に署名した者は、江戸に続々と戻っていった。

 近藤さんたちと策を練ったが結果は一つしかなかった。残留願いを出す、それしか思いつかなかった。

 京の守護職、会津藩に提出すればどうにかなるかも知れない。それしか思いつかなかった。なんとかして残留し、警護に参加させてもらいたかった。なんとしてでも、近藤さんたちと共に目的を達成したかった。

 そして、無情にも時は過ぎ、半月ほど経った三月三日、浪士組東帰の命令が出た。
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