幽霊の思い出話
車を発進させ、十分程走った頃、左之が話しかけてきた。
「真沙美、もう着くのか?」
そわそわした様子もあるけれど、なんとも言えない目で行く道を真っ直ぐ見つめていた。
「うん。何件かお寺とかこのへんあるみたいだから迷わないようにしないと。・・・あ、行き先の看板あった。えっと、この銀行を左に曲がって真っ直ぐっと」
真っ直ぐ少し走ると、ナビが「まもなく目的地です」と声を発した。
「あっ、ここ曲がったところみたいだよ」
住宅が並ぶ道を通り過ぎ、法蔵寺橋と書かれた短い橋を渡ると正面にそれらしき場所が見えてきた。
「左之、あそこ。法蔵寺って書いてあるところが目的地」
少し前のめりになりながら、指をさした方をじっと見据えていた。