幽霊の思い出話

 お寺の駐車場に車を停め降りて鍵をかけていると、左之はすぐに擦り抜けて降りて、動ける範囲内を動き回っていた。

「左之?」

「真沙美、どっちだ?」

「ちょっと待って」

 何か感じるものがあるんだろうか。左之は辺りを見回していた。急いで階段を上り、左之の近くに行った。

 木が茂った木陰が多いお寺で、本堂の後ろには山が見えていた。キョロキョロと周りを見渡すと看板が立っているのが目に付いた。

「あっ」

 思わず声が出た。

「あったか?」

「あったよ。近藤勇って書いてある。でも首塚って」

 看板には「新撰組隊長 近藤勇 首塚」と書かれたあと、こっちの方向にあるという矢印が書いてあった。
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