幽霊の思い出話
何も言えなくて口をつぐんだ。確かに五十年会えなかったのに明日会える保証なんてない。絶対近日中に会えるなんて、安易に返答出来ない。
「何も言わないってことは納得してくれたんだな?」
そう言われ私は黙ったまま何も言わなかった。いや、言えなかった。言い返す言葉が思い付かない。
「交渉成立だ」
猫がびくっとして、左之を見上げた。そして、ゆっくりと動きどこかへと歩き去って行った。
「ありがとう、またな」
猫に向かって大きく手を左右に振ったあと、体を反転し私に向き合った。