幽霊の思い出話
「左之、もういい。行こう」
そう言って土方さんは踵を翻した。
「なっ、土方さんっ」
「左之、行くぞ。芹沢さん失礼しました」
一礼をして、土方さんは部屋を出た。あとに続くように小声で挨拶をし土方さんのあとを追った。
「土方さん、なんだって途中で引き上げるんだよ」
「何を言っても、あの人は聞く耳なんて持っちゃくれねぇよ」
「でもどうにかしないと、俺たち芹沢さんの尻拭いばかりする羽目になるんだって。今回の力士との喧嘩だって道を譲らないとかそういう話だったんでしょう?それで死者まで出すなんて・・・。せっかく京に居れるのに、こんな身の時に問題なんて起こしてたら松平さんが・・・」
「わかってる。それは近藤さんもわかっているはずだ」
口端を噛み締めるように、土方さんは言い放った。
「これ以上、勝手をさせてはいけないな」