幽霊の思い出話
いつしか近藤派と芹沢派の二体制がはっきりとし始めた。元々、派閥としては分かれていたようなものだったけれど。
出来るだけ芹沢派の連中と距離をとるようにしていたある日、俺達は皆呼び出され召集した。
「暑いなぁ」
「あぁ、蒸し暑くなってきたな」
愚痴をこぼしながら、幹部格の誰かが話し始めるのを待っていた。
「おほんっ。集まってもらって申し訳ない。今から大事な話をする」
近藤さんがわざと咳ばらいをし、少し照れた様子で皆の前に現れた。芹沢さんは近くの縁台に腰を掛けていた。
「この度、尊王攘夷派を京都から一掃することが決定した」
少し驚いた。そんな話になっているなんて。尊王攘夷派といえば、主に長州藩のはずだ。
「すでに各所に伝達が回っているようだ。政局の主導権を奪取するためにも我々浪士組も協力せねばならないと思う。出動命令は今晩、もしくは明朝になるだろう。皆準備をし、いつでも出動できるよう待機をよろしく頼む」
近藤さんは皆の顔を見ながら言った。