幽霊の思い出話
そして、山南さんが近藤さんの横に行き「どうか、お取り次ぎを」と頭を下げた。
だが結局門番は首を横に振るだけだった。
「山南さん、どうなってやがんだ」
新八と共に山南さんに駆け寄る。土方さんは唇を噛み締めていた。
「多分不逞浪士と間違えられているんだろうね」
「糞っ、どうにかなんねぇのか」
どうすることも出来ず、歯がゆい思いをあと何回すれば俺たちは認められるんだろうか。
「もう良い、近藤」
低くよく通る声、芹沢さんが鉄扇を手に前に出てきた。ひと呼吸したあと芹沢さんは門番を見据えた。その瞬間。
「会津藩お預かりの壬生浪士組、命により馳せ参じた。我々は開門するまでここに待機致す」
地響きでも起こるくらいの大きな声で、威嚇するように門番へ、いや、門内にいる者たちに向かって発した。