幽霊の思い出話

「芹沢さん」

 近藤さんは驚いて芹沢さんを見た。他の者も一緒だった。

「行くぞ、ここに居ては邪魔になるだけだ」

「ど、どこに?」

 芹沢さんはくるりと門とは反対に体を向け歩き始めた。

「端で火でも焚いて待機すれば良い」

「はいっ」

 その言葉を聞いて、皆ぞろぞろと移動し始めた。

「ちっ」

 苦々しく土方さんは芹沢さんを見ていた。

「土方さん」

「左之、このままでいいと思うか?」

「えっ?」

「このままじゃいけないと思いますよ?土方さん」

 俺の背後から総司が土方さんに返事をしながら現れた。

「総司っ」

「このままじゃ、近藤さんは芹沢さんに飲まれてしまう」

 総司の目も土方さんと同じ目をしていた。
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