幽霊の思い出話

 戦うことに真っ直ぐな平助はいい腕を奮う。だからその腕を信用していない訳ではないが、まだ若い、死に急ぐようなことだけはしてほしくない。

「なに?」

 ぼぅっと考えながら平助を見ていると、不思議そうな顔でこっちを見た。

「いや、暇だな」

「そうだね」

「じゃあ、稽古でもするか?」

 悪戯に笑いながら言うと、平助は苦笑いをした。

「左之さん、勘弁してよ」

「悪い悪い、俺も今はしたくねぇよ」

 でもいつでも動くことが出来るよう、少し体を動かす方がいいのは事実。俺は立ち上がり伸びをした。

「ちょっと向こう行ってくる」

 肩に立てかけていた槍を持ち、少し離れたところに居た土方さんの元に向かった。
< 172 / 279 >

この作品をシェア

pagetop