幽霊の思い出話

 間もなく夜が明ける。事が動いたのはそんな時だった。

「ねぇ、何か声がしない?」

 ふと、平助が耳を澄ませながらそんなことを言った。

「えっ?」

 近くに居た新八と顔を見合わせながら眉を潜めた。

「いや、聞こえるってば」

 人溜まりから抜け出し、少し離れたところに出て耳を澄ませた。

「・・・本当だ。門内からじゃないか?」

「あぁ」

 土を踏む音が無数に聞こえた。

「何かあったのかな?」

「そうかもしれねぇ」

「俺、土方さんたち呼んでくるわ」

 新八はそう言って、勢いよく走っていった。

「何なんだ」

 何人か異変に気付き、刀に手を掛け身構えていた。門番たちも振り返り、門をじっと見て槍を構えこんでいた。
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