幽霊の思い出話

 段々と音が近付いてくる。

「どうしたっ」

 近藤さんと土方さんが額に汗を滲ませながら戻ってきた。

「門内がなんだか慌ただしいんです」

 そう言うと、二人は門の方を見た。

「物音がするな」

 その時だった。門がぎぃーっと音を立てながらゆっくりといた。

 何人かの人影が見える。

 数人の供を引き連れた男が、偉そうに立っていた。壬生浪士組と交友のある会津藩の人間だ。

 門番たちが彼を見て、槍を戻す。俺たちも刀から手を離した。

「遅くなった。壬生浪士組の者に命を言い渡す。これより、御所内の警護を任せる」

 突然の言葉に皆驚愕したものの、一同片膝をつき、頭を下げた。

「はっ」

 やっと動ける。それだけで、俺たちは歓喜した。

 陽がのぼり始めていた。
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