幽霊の思い出話

 この人には余裕がある。そして、周りに有無を言わさない威圧感がある。だから芹沢派の人間は愚痴もこぼさず、芹沢さんに黙って従っていた。

 どっちの仲間がいいんだろうな。

 ふとそんなことを思った。

「左之、俺たちはあっちの方に行こう」

 新八と共に、芹沢派から少し離れるように移動した。

 あたりはすっかり明るくなっていた。もうすぐしたら暑さが出てくる。

 そう思うと少し嫌気が差した。でも愚痴ってばかりいられない。近藤さんがやる気なんだ。俺たちが協力しなくてはいけない。

 自分を奮い立たせるように言い聞かせた。

 直に終わる。終わらない戦いなどない。

 いつか誰かに聞いた言葉を脳内で再生していた。
< 178 / 279 >

この作品をシェア

pagetop