幽霊の思い出話
「皆ご苦労であった。戻ろう」
芹沢さんの大きな声に、皆が賛同し帰り始めた。
警護の間、どしっと構え、鉄扇で仰ぎながらじっとしていたこの人の声を聞いたのは、久しぶりな気がする。それぐらいこの警護は長く感じるものだった。
空を仰ぐ。もうすぐ、星が見える時間だ。
「なぁ、総司。俺たちが制圧に回っていたら、少しは何か違っていたかもしれないな」
「そりゃ、違ってたと思う、でも今回と違って血の雨は免れないだろうね」
「怖いやつ」
くくっと笑うと、総司も笑った。でも、間違いではない。きっと今回のように長州藩を締め出すようなことはせず、切って切って、簡単にケリをつけようとしたに違いない。
俺たちは言葉少なに、家へと帰った。
次は何か出来ることを期待して。