幽霊の思い出話

「芹沢さん、芹沢さん」

 声を掛けると芹沢さんは寝入っているようで、目を開けなかった。眉を少し潜まし、また寝息を立てた。

「こんな無防備な芹沢さん見たの初めて」

「俺もだ」

 芹沢さんの脇には何本ものとっくりや酒瓶が転がっていた。

 少しは感傷に浸っているのだろうか・・・。ずっと共にしていた仲間が新撰組に逆らう行為をとっていた。裏切っていたともいえる行為。

 芹沢さんは一体何を思ってるんだろう。

「芹沢さん、大丈夫ですか?」

 少し間を取って、今度は平助が声を掛けた。

「・・・ん。あぁ、おまえたちか。何の用だ」

 目を擦りながら、体を柱から離した。

「あ、いや、その」

 飲み過ぎてないか様子を見に来たなんて言えない。
< 197 / 279 >

この作品をシェア

pagetop