幽霊の思い出話

 屯所を出たあと、何かを話すこともなく、皆黙って歩いた。

 月明かりがとても明るい。土を踏む音がやけに耳につく。どんな気持ちでこの道を歩いているんだろうか。芹沢派を潰すきっかけになるかも・・・とか考えていそうな気がする。実際に俺もそれは頭を過ぎった。でも、人数が欲しい新撰組にとって、人員が減るのは痛手に思う。

 ・・・でも、仕方のない事なんだろう。隊務を怠り、会津藩に知られた以上、新見さんの行く道は一つしかないのだから。

「着いた」

 誰かが呟いた声にハッとし我に返った。

「左之さん、どうしたの?」

「いや、なんでもねぇ」

 心配そうに覗き込む平助。

「行こう」

 土方さんを先頭とし、山緒の中に入り込んだ。あらかじめ店主には金を掴ませたらしく、騒ぎ立てる様子はなく静かなものだった。
< 200 / 279 >

この作品をシェア

pagetop