幽霊の思い出話
無数の女の声と、微かに新見さんの声が聞こえた部屋の前に集まる。全員が来たのを確認しいたあと、土方さんは一気に部屋の襖を開けた。
「新見錦、新撰組だ。動くな」
そう言いながら部屋に押し入った。
「な・・・っ、ちょっと待てくれ、一体何の真似だ」
新見さんは持っていた酌を落とし、目を丸くしてこっちを見た。酒が辺りに飛び散った。
取り巻くように居た女たちは一斉に散らばるように、小さく悲鳴をあげながら出て行った。
「これはどういうことだ」
威嚇するように、こちらを見直した。
「どういうことだではないでしょう。あなたこそこんなところで何を?」
山南さんが落ち着いたいつもの声で一歩前に出ながら言った。
「な、何って・・・、それは」
「見て分かれとでも?」
冷ややかな声。追い詰めていこうとする空気がわかる。