幽霊の思い出話

 何も言うな。そう言わんばかりの威圧さを纏って、新見さんは店主を見ていた。

「新見さん、そう睨みなさんな」

 同じように気が付いた新八が新見さんに声を掛けると、新見さんはふっと目線を下げた。

「店主、この男に見覚えは?」

「は、はい。あります」

「よく見掛けますか?」

「・・・はい。よくいらっしゃる方です」

 新見さんは頭を抱えるように、うなだれた。

「それは昼?夜?」

「そうですね・・・、昼が多いです」

「貴様っ」

 新見さんが刀に手を掛けようとした瞬間、平助の刃先と俺の槍が新見さんに向けられた。

 この状況下で刀に手を掛ける理由は一つしかない。

「昼?おかしいですね、新見さん。あなた昼間は隊務を行っているはずでは?」
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