幽霊の思い出話

「お前、この男に見覚えは?」

 ビクビクしながら男は新見さんの方をちらっと見たあと、土方さんを見た。

「あります」

「いつ?どこで?」

「何日か前の昼間、街で会いました。その時に金銭を要求されました」

「私はそんなことしていない、私ではない」

 必死に懇願する新見さんを土方さんは一喝した。

「見苦しいぞ、新見錦っ」

 その場に居た全員が萎縮するかのような低い声で、土方さんは言い放った。

「ここまで、証言が揃っていてまだ悪あがきする気ですか?」

 冷ややかな目で山南さんは言い放った。これ以上否定出来ないように。

「・・・そうだな。もう、ここまでのようだ」

 新見さんは観念したのか、足を組み直し、姿勢よく座った。

「自決を選ぶか」

「せめて最後は潔く自分の手でしよう。介錯不要だ」

 そう言って小刀を懐から出した。
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