幽霊の思い出話

「何か残す言伝はあるか?」

 少し考えたあと小さく、申し訳なさそうに言った。

「・・・芹沢さんにすまないと言っておいてくれ」

「承知した」

 総司が先程からオロオロしている男を外に出す。この場に居た全員が新見さんをじっと見ていた。

 新見さんはこの瞬間、何を思っているのだろうか。自分なら、この立場になったとき、自決出来るだけ良かったとでも、思っているんだろうか。それとも死にたくないと足掻くのだろうか。

「あと、迷惑かけて、手を煩わせて済まなかった」

 そう、新見さんは言ったあと少し頭を下げた。

「・・・いや」

 小さく土方さんが返事をしたのを確認したあと、新見さんは腹を切った。
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