幽霊の思い出話
しばらく走り続けていると、左之はゆっくりと体勢を起こした。
透けている体を見るのに馴れてきたのか、違和感がなくなってきた。
「疲れていないか?」
左之の声は寝起きのような声で低く、でもとても優しかった。
「大丈夫。それよりもうすぐしたら着くよ」
「そうか」
左之はまっすぐ前を見つめていた。
「なんだか不思議ね。いろんな場所にお墓があるなんて」
「そうだな」
「左之はどこにあるのか知らないの?」
「知ってたら教えてるさ」
「そうだよね」
突っ込まれて思わず笑ってしまった。
「自由に動けたらきっと楽だったんだろうな」
左之はぼそっと呟いた。でも、左之が自由に動けたら、きっと私たちは出会うことはなかった。