幽霊の思い出話
出会うことがなかったら、私はこうして一緒に東京に行くこともなかっただろう。仕事を休むことも、運転することもきっとなかった。
「あ、ここ曲がるのかも」
なんとか大裏門と書かれた看板が赤信号の横に見えた。
「近いか?」
「多分」
少し狭い道を走りぬけると、ナビが「まもなく右方向目的地です。案内を終了します」と機械音を発した。
「ここだね」
コンビニのそばを右折し、すぐにあった敷地内に車を停めた。降りようとすると、左之はすでに降りて、姿が消えた。
「あれ?」
助手席側に回ると左之が居なくなった謎が解けた。
「ここにもあったんだね」
「あぁ」
私の言葉に短く返事した左之は、石像の前に立ち尽くしていた。