幽霊の思い出話
「左之、やめてよ」
すぅっと左之の肩を通り越して、私の体は左之の体にのめり込んだ。ぐにゃっと視界が歪む。驚いて咄嗟に離れた。
「連れて行くよ?私どこにでも連れて行くから、頭なんて下げないでよ」
「ははっ、ごめんな?」
左之は私の頭を撫でる真似をした。
「なんで謝るの?」
「ん?なんでだろうな?」
左之は惚けてみせた。分かってる。きっと私が驚いた顔をしていたから。最初に会った時と同じような顔をしたから、安心させようとしたんだと思う。
幽霊だということを忘れそうになる。こうやって、目の前に左之は居るんだから。でも、触れることは叶わない。
近藤さんのお墓の正面に立ち、一礼をした。
「左之は私が責任もって連れて行きます。また来ます」
そう、私はお墓に向かって話しかけた。