幽霊の思い出話
左之は少し驚いた顔をしたあと、口に手を当てて笑い始めた。
「ふふっ、ははっ、あははは」
「え?何?何で笑うの?」
「いや、なんか知っている奴に似ていたんだ。なんとなく」
「それは男の人?」
「いや、女だ。昔の知り合いにな」
「・・・そう」
「どうした?」
「ううん。男に似ているって言われなくて良かったなっと思って」
首を横に振った。彼は一体、今、私を見て誰を思い出していたんだろう。私に誰を重ねて思い出していたんだろう。
「さーてと、左之。行きますか?」
「あぁ。よろしく頼むよ、真沙美」
「うん。行こう」
二人で、並んで歩き始めた。夕焼け色に染まった空が、藍色へと変わる途中の空を見上げながら。