幽霊の思い出話

 それから、ゆっくりとお風呂に入り、ささっと髪を乾かし、ベッドに潜り込んだ。先程言ったように、本当に左之は覗きには来なかった。

「左之は寝ないの?」

 出窓に座り込んで居た左之に問いかけた。

「あぁ。この体になってから、別に寝なくても平気なんだ。たまに、眠るだけで全然大丈夫だ」

「そう」

「ゆっくり休め。何かあったら起こしてやるから」

「頼もしい限り」

 ふふっと笑うと、左之も笑った。

「ねぇ、左之。私が寝るまでで良いから少し話して?」

「今から?寝るんだろう?話していたら寝れないだろう?」

「ううん。眠たくなったら勝手に寝るから、それまでだけ。ねっ?」

「そうか?真沙美がそう言うなら」

 幼い子供がお母さんに絵本を読んでもらうように、私は左之が話し始めるのを待った。

「新見さんが死んで、少しした頃だった」
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