幽霊の思い出話
「もしかして移動するのか?」

 まわりに悟られないようひそひそと、新八と話した。

「このまま戻るだけなら、いいんだが」

「ちょっくら行ってくるわ」

 そう言って新八はお猪口を持ち、立ち上がり、芹沢さんたちに近寄った。

 何人も行くと怪しまれてもいけないと思い、俺は総司を探しに行った。

 廊下を見渡しても居らず、店の者に問いかけると、出入口付近に居たとのことで、出入口に向かった。

 店を出てすぐのところで、総司は壁にもたれかかり、天を仰いでいた。

「おい、総司。雨が降っているのに、何してんだ」

 びくっと体を動かし、こちらを見た。

「あぁ、左之さん。ここは軒下なんで濡れないんで」
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