幽霊の思い出話

暗殺

 座敷にほとんどの人間が居なくなってから、俺たちは宴会場を出た。

 外はまだ雨が降っていた。ちょうど良い。俺たちの足跡を洗い流してくれる。

「少し肌寒く感じるな」

「あぁ、よく降る雨だ」

 八木邸に戻ると母屋の一角に灯りが見えた。声が聞こえる。あそこで飲み直しているんだろう。

 様子を伺いながら、自室がある八木邸の離れの方に移動した。縁側に総司が居た。

「あ、二人とも」

「どうだ?」

「土方さんが出てきたら行くこととなりました。準備して控えとけって」

「分かった」

「山南さんは先に戻って、あっちの部屋に居るから、黒装束に着替えて行きましょう」

 足音を立てないように三人で移動した。
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