幽霊の思い出話

 どれくらい経ったんだろう。雨の音だけが耳についた。いつまで降るんだろう。そんなことを考えている時、スーッと襖が開いた。

「待たせた」

 土方さんが黒装束を身に纏い現れた。

「いけますか?」

 総司が刀を握りしめた。

「あぁ、座敷に屏風を立て、区切ってある。北側に芹沢さんにお梅、南側に平山さんと女が寝ている。西側には平間さんと女だ。着替えたあと、こっそり見に戻ったが、すでに誰かいびきをかいて寝ていた。声もなかった」

「どう動きます?女はどうします?」

 山南さんが土方さんに問いかけた。

「俺と総司は北側に、山南さんと原田は南側に、西側は永倉に任せる。永倉一人で良いか?」

「あぁ、かまいませんよ」

 新八が頬被をするのを見て、俺も被った。

「女は顔を見られる可能性もある。目覚めれば切れ」

 冷静な声だった。
< 263 / 279 >

この作品をシェア

pagetop