幽霊の思い出話
「ただ奥の間には八木邸の奥方と子どもたちがいる。顔は見られないようにし、なるべく気付かれないよう暗闇に紛れて動く。八木邸の人間には、危害を加えたくない」

 淡々と土方さんは指示を出した。

「はいっ」

 4人は声を揃えて小さく返事をした。

「失敗は許されない。なんとしてでも仕留める」

 こくんと頷き、立ち上がってゆっくりと部屋を出た。

 部屋を出てからは素早く移動した。本来槍を使う俺だが、室内のため刀を使用することにした。鞘から抜き、右手にしっかりと刀を握りしめた。

 暗闇に目が慣れてきた。先頭を行く土方さんがゆっくりと襖を開け、各々移動した。

 山南さんについていき、枕元に立った。平山さんはすーすーと寝息を立てていた。同衾しているはずの女が居ない。だが、今は女は後回しでいい。唾を飲み込み、刀をかまえた。

 その瞬間だった。
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