幽霊の思い出話
 土方さんたちの方に合流すると、芹沢さんは刀を突き立てられながらも、縁側の方に逃げ込もうとしたんだろう。部屋に置いてあった文机が斜めに移動し、あちこちに血が飛びちっていた。

 背後を見ると、血塗れのお梅が布団の上で横たわっていた。だが、まだ、息があった。

「すまない」

 俺はそう呟き、刀を持ち直し、虫の息だったお梅の息の根を止めた。芹沢さんは這いずるように、襖を持とうとしガタガタと音を立てた。

「がはっ」

 血を吐き、襖に倒れかかりながら横たわった芹沢さんの身体には、無数の刀傷があった。何度刺されたんだ、この人。目を見開き、動かなくなった。

 着ていたはずの寝間着は、ただの布切れと化し、主の血を吸収していた。
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