幽霊の思い出話
 呆気ない。数刻前まで、陽気に飲んだくれていた人間が、こうもあっさりと人形のように動かなくなるなんて・・・。

 威張りちらしていたあの威厳さは、一瞬で消え去った。

「ふぅ」

 平間さんを逃がしたのは痛手だが、もう戻ってはこないだろう。ここに居ると命を狙われると分かっただろうから。まぁ、戻ってきても、再度暗殺せざるを得ないが。

 あの女は大丈夫だろう。きっと俺たちが誰か分かっていない。ほとんど口を聞いたこともない俺たちの声なんぞ聞いたところで、分からないだろう。

 刀についた血を拭い、鞘に収めた。自分に返り血がついていないか、灯りをつけて確認をしていると、廊下から無数の足音が聞こえた。
< 268 / 279 >

この作品をシェア

pagetop