幽霊の思い出話
「それでか。まぁ戻ってくることはないだろうよ」

 同衾していた女に邪魔をされたようだった。

「あぁ。ちょっと様子を見に行こうぜ」

「行こう。この騒ぎの中、逆に行かなきゃ怪しまれるしな」

 廊下に出ると何人かが、小走りで行き来している。

「あ、新八さん、左之さん」

 平助が先に母屋付近に行っていたようで、声をかけてきた。

「どうだ?」

「今、近藤さんたちが、八木邸の奥方に話を聞いたり、中を見て回ってる」

 バレてはいないようだ。人集りが出来ていて、部屋の前までは行けなかった。

「そうか」

 すまないな、芹沢さん。
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