幽霊の思い出話
「左之っ・・・、大丈夫?」

 話しを思わず遮ってしまった。左之の顔付きが曇っているように見えたから。

「あぁ、すまない。かなりの年月が経つのに、いろいろと覚えているもんだな」

 自分の両手を見ている。ふぅと息を吐いた。私はただ、じっと左之を見ることしか出来なかった。

「自分の手には、刀や槍を持つこと以外、あの当時は考えられなかった。芹沢さんが死んだことにより、自分たちで新撰組を取り仕切る楽しみと、重圧、それを感じると同時に、人を切ること、殺すことに、なんの疑問も罪悪感も持たなくなっていった」

 両手をぎゅっと握りしめていた。

「守り方を知らなかったんだ。人の命が軽すぎた」
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