幽霊の思い出話

「初めてだ。俺が見える人間に会えたのは」

「・・・そう、なんですか。私も幽霊を見たのは、初めてです」

 私には霊感なんてない。今まで一度もそんなものがあると感じたことはない。

 二十代であろう男は嬉しそうに笑い、私の近くにしゃがみ込んだ。

「おまえ、名前は?」

「・・・真沙美です」

 そう言うと少し驚いた顔をし、また先程の嬉しそうな顔に戻った。

「真沙美か、いい名だな。俺は原田左之助(ハラダサノスケ)だ」

 どこかで聞いたことのある名前だった。

「どうした?怪訝な顔して」

「あっ、いや、どこかで聞いたことある気がする名前だなと思って」
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