幽霊の思い出話
「帰りたいと思ったことはないの?」
「全くなかったわけじゃない。いつか帰ろうと・・・、戦いが終わったら帰ろうと考えていたんだけどな」
そう言ったあと、左之は黙ってしまった。
屋上の柵をすり抜け、再び縁へと座り込んだ。左之と背中合わせになるように、柵にもたれ掛かるようにして私も座り込んだ。
帰りたくても帰れなかった時代に生きていたんだよね。
「ねぇ、左之。他の人は地元に帰っていたの?」
「いや、地方の奴らが多かったからな。帰ることはほとんどなかったと思う」
「そっか」