幽霊の思い出話

「帰りたいと思ったことはないの?」

「全くなかったわけじゃない。いつか帰ろうと・・・、戦いが終わったら帰ろうと考えていたんだけどな」

 そう言ったあと、左之は黙ってしまった。

 屋上の柵をすり抜け、再び縁へと座り込んだ。左之と背中合わせになるように、柵にもたれ掛かるようにして私も座り込んだ。

 帰りたくても帰れなかった時代に生きていたんだよね。

「ねぇ、左之。他の人は地元に帰っていたの?」

「いや、地方の奴らが多かったからな。帰ることはほとんどなかったと思う」

「そっか」
< 77 / 279 >

この作品をシェア

pagetop