幽霊の思い出話
「・・・そうなのかもしれない」
左之は小さく呟いた。
そして二人でビルの上からゆっくりと街を見下ろした。無数の小さな光が街を明るくし、この世界は輝き光っていた。
「真沙美、ありがとう」
「ん?」
街を見下ろす左之の横顔を見つめた。私はただ、大橋様や石川様のようなお客様の背中を押したように、左之の背中も押してあげたい。そう思った。私にはそれくらいしか出来ることがない。
「頼む。この目で新撰組の最後と故郷の今を見せてくれ」
「・・・うん。任せて」
この不思議な出会いを、私は何かの運命だと感じることにした。幽霊に出会ったなんて誰が信じるんだろう。信じてくれる人なんてそうは居ないはず。
だから私はこの出会いを大切にする。五十年一人だった左之を助けてあげたい。