幽霊の思い出話
「・・・仕方ないね」
神木が持っていた書類を机に置きながら、ため息混じりに言った言葉を聞いたあと、私は頭を上げた。
「本当に?」
「ただし、連絡したらそれには返答して。なかったらクビだから。飛んだとみなすよ」
煙草に火をつけながら、神木さんは強い口調で言った。
「うん、わかってる」
「信用してるから。ちゃんと帰ってきて」
「わかりました。じゃあ、今から着替えて帰るね」
「えっ?今?」
「今っ。いってきます」
再び踵を返した。
「真沙美らしいね。いってらっしゃい」
クスクスと神木さんは笑いながら手を振っていた。