幽霊の思い出話
「そうだなぁ」
頭をくしゃくしゃと掻いているのが、横目でも分かった。どんな話しをしようかと悩んでいるようだった。
「じゃあさ、今会いに向かっている近藤さんについて教えてよ」
「あぁ、そうしようか。・・・あの人と俺が出会ったのは新撰組が出来上がる前だった。俺が脱藩してしばらくした頃だったよ」
赤信号になりブレーキを踏み込んで停車し、左之の方を少し見た。
昔を懐かしむように目を細め、少し笑みを浮かべて話しはじめた様子だった。私は口を挟まず、左之の話しを聞くことにした。