幽霊の思い出話
道中
「うー、寒い」
寒さでかじかむ手を擦り合わせながら、試衛館と呼ばれる建物に向かって歩いていた。
「左之」
背後から少し野太い声が聞こえ振り返ると、声に似合う顔がこちらに歩み寄ってきていた。
「近藤さん。おはようございます」
「あぁ、おはよう。今日は一段と冷え込んでいるな」
そう言いながら、近藤さんは、はぁっと白い息を吐いた。
「雪でも降りそうですね」
男二人、歩きながら空を仰いでいる光景はきっと不様だろう。