今宵、最後の一杯を…

そういう疑惑が広がって何気に訝しがっていると
目の前に薄紫色の鮮やかなカクテルが静かに置かれた。

 「これは…ブルームーン…?」

 カウンター越しに見上げると

 「そう…このカクテルに含まれる意味って知ってる?」

 「たしか、できない相談とかありえないって拒絶を意味するんじゃなかったっけ?」

 「模範解答だね。1ヶ月に2度の満月はないって思ってる?違うよ…。」

 その美しいカクテルに口を付け…黙ったまま言葉の先を
促すようにその瞳を見つめ返す。

 「満月から、次の満月までは29.5日…ありえないこともない…。まれにおこるファンタジックな出来事。ほんのり甘くて香りがやさしいでしょ?ニオイスミレのリキュールは恋の媚薬…パルフェ・タムールはフランス語で「完全なる愛」という意味だよ。」
 
 「なにか断るときのカクテルかと思ってたんだけど、意味深いんだ…。」

 さすがだねっと感心する私を見て

 「もう一つ…ブルームーンを好きな人と見ると、幸せになれるって伝説もあるから…。」

 
< 10 / 46 >

この作品をシェア

pagetop