今宵、最後の一杯を…
ヴィヴァ・レオ
マスターは、遊びなれた女だと思っているのかな?
実際…目の前で見ず知らずの男についていこうとしたんだから
それは否めない…。
そっと離した唇が名残惜しげに吐息を漏らすから
切ないと感じて…戸惑う…。
「時間はたっぷりあるから、先にこれを飲ませて…。」
ブルームーンに視線を落とし…
体に回された意外にしっかりとした腕をそっとほどいた。
「明日は仕事ないの?」
普段はカウンター越しに向かい合っているから
この角度で見上げることはない…。
マスターの声が髪にかかり…いつもとは違う親密さに
ときめく心を持て余す。
「うん…。基本、土日祝は仕事だからね。」
そしてデパートの紳士服売り場で働いてる…と続けた。
「そっか、だから水曜とか木曜によく来てくれるんだ。」
ふんわりと微笑む顔…酔いの回った思考はうっすらと膜に
覆われているみたいで…
うつろな表情のままその顔を見つめた。