今宵、最後の一杯を…
ブルームーン
ずっと…あの男が君の前からいなくなればいいと思っていた…。
俺の作ったカクテルを口に含んで「美味しい…」と言って微笑む
大人びた口元が好きだ。
微笑むときに右頬にできるえくぼが少女のように
あどけなく見える…。
一杯目は「ギムレット」…。
シェイクせずにステアし「マティーニ」を作るように…
クラシックな味わいにこだわる角の残ったドライなカクテルを
愛しむ姿は作り手としての俺の気持ちをくすぐって
最大の喜びを与えてくれる。
二杯目の「ヴィヴァ・レオ」…。
あまり女の子が好まない癖のある「大人の男向け」のカクテルを
煽り不敵に笑う その辺の男よりも酒の味わいが分かる君に…
ふさわしい一杯だと感じていた。
美保がこの店に来てくれることを
心待ちにするようになったのはいつだろう…。
気がついたときには…もう…惹かれ始めていた…。