今宵、最後の一杯を…

 静かに酒を楽しむお客が多いこの店で

 俺は付かず離れずのスタンスをとっている。

 雰囲気を読んで、個々の時間を楽しんでもらえれば良い…。

 バーテンの仕事が好きだから休日返上で、専門誌や専門書を読み
他のBARを回り、試飲会に出かけ…「趣味」のような「仕事」に
のめり込んだ。

 女の子から探りを入れるように「彼女は?」と聞かれても…
食指は動かず…反射的に「酒」と応えてしまうぐらいに

 それはもう…間違いなく…

 正常な男の「趣味」域を超え「オタク」に到達していた。


 だから…かなり久しぶりに「酒」以外に

 心を奪われて戸惑ってしまう…。



 
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