今宵、最後の一杯を…

 今思うと…あの男に連れられて

 美保が店にやってきたあの夜から…

 「そうね…ギムレットを下さい。」と言って君が

 やわらかく微笑んでくれたときから…

 ずっと夢中だったのかもしれない…。

 ただ君はいつも幸せそうな表情で、愛おしむ眼差しを
あの男にそそいでいた…。
 
 「酒の女神」は他の誰かの恋人で、それは哀しくもあり…

 手に入らないことへの安心でもあった…

 もし手にすれば…


 おかしくなるほど執着してしまうような

 予感がしていたから…。



 
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