今宵、最後の一杯を…
日常から隔絶された日々を思い返して、欲情するのは
愛されていたというよりも…ひどく執着されていたのに…
あっけなく捨てられたから…。
「ギムレット」を口に含んで、最後の言葉を心で
反芻(はんすう)した…。
「この執着が全てを狂わせる…。お前以外の女を選ばないと
偏頭痛のような嫉妬を抱えつづけて、そのしなやかな体が
他の男に抱かれることを想像しただけで発狂しそうになる。
この感情は愛じゃない…狂気だ…。」
まったくもって意味が分からない…。
愛なんて紙一重でどんな方向にもいってしまうんだから、狂気上等!
でも……ずるいな……溜息が零れた。
私の中に、狂気を孕んだ偏執的な執着と快楽を刻み込んだまま
離れていった男は、同時進行で付き合っていた
「自分が幸せになれそうな女」を選んで結婚したらしい…。
カウンターのいつもの席にすわり、そんな風にぼんやりと
別れた男のことを考えていた。