今宵、最後の一杯を…

 そして、もう一度振り出しに戻り横に座った男と差し出された
タバコに目をやる…。

 何気なく受け取ってくわえると、火を点けてくれた。

 ホストのような仕草が遊びなれていることを告げて

 その瞳が私を求めていると…一夜限りの合図…。
 
 タバコは…もう一度吸い始めると今度はきっと止めれなく
なくだろう…。
 
 SEXに狂うことはあっても、男に依存することはない…。
 
 結論…初対面の男とのSEXより、やめたタバコに手を出すほうが
体に悪そうだと…。

 そっと男の下唇に指を這わせ軽く開かせる。

 「タバコは吸わないから…。」

 タバコを一度ふかし唇から離して、ゆっくり差し入れた。

 やわらかく微笑み、その膝に微かに触れる…

 少し惚けた顔をした男がその手を包んだ…。

 薄い唇…骨ばった大きな手…悪くない…私好みだ。

 「俺の腕の中で、君がどんな表情(かお)をするか見てみたい…。」

 そっと耳元に寄せられた唇が囁く甘い言葉…。

 「いいよ…見せてあげる…。でも、後一杯飲んでからね。」

 
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