今宵、最後の一杯を…

 「ご馳走様でした。マスターまた来るね…。」
そう言ってスツールから立ち上がった。

 「美保ちゃん…待って…。」腕を掴まれたことよりも
名前を呼ばれたことに驚く。

 視線の先には、ひどく切羽詰まった様子のマスターがいて
ばっちりと目があった。

 「どうかしたの?」お腹でも痛いんじゃないかと思うぐらい顔が青い…。

 「お腹が痛くて…。」はい…正解…って!

 平日のかなり遅い時間なので、お店には私とタバコの彼と
マスターの3人しかいない…

 ここで見捨ててはいけないよね?
 
 病人を前にハイそれではと立ち去って
2人でこれからやっちゃう!?とか…

 …できないな……。

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