今宵、最後の一杯を…
 
 困った顔をして、タバコの彼を見上げると

 「マスター辛そうだし側にいてあげて。」

 胡散臭い笑顔を浮かべて、私の肩をそっと押して
もう一度椅子に座らせた。
 
 「じゃあ俺帰るよ…。また機会があったらね…。」
  
 そう言って、微かに触れるだけのやたらと甘いKissを残し
「まあ…もう手出しできそうもないね…。」
なんて意味不明の言葉を発して頬に軽く触れ
長居は無用とばかりに、さっさと店から出て行った。

 あまりにもあっさりと身を引かれてしまって
なんだったんだ??と一瞬あっけにとられたが
かなり辛そうなマスターの姿に

 「救急車とか呼ばなくて大丈夫?私、飲んでるから運転できないし…。」

声を掛ける。

 「ありがとう…このまま、店を閉めて少し休めば落ち着くと思うから…。」
 
 「そう?じゃあ私は落ち着くまで、もう少し側にいるよ…。」

 マスターはやけにホッとした顔をした。
「手伝うよ。」という私の申し出を
「ありがとう。」という言葉で断って
さっさと店を閉め、テキパキと後片付けをしていく…

 本当にお腹痛いの…??

 
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